Bartok Gallery  アーティストへの道
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 第2話 『もうすぐ英国に留学します』 こうせい

【こども時代】

子供の頃から絵が好きでした。似顔絵も(笑)…。
よく授業中に グロテスクな先生の似顔絵を描いては、怒られました。
でも自分を表現できるのは絵でしたから。

学校ではのびのびやっていましたが、家は厳格な家庭でした。

たとえば テレビは禁止!

たまにドキュメンタリーなどを見るくらいでした。
おかげで…ちょっとズレた(時代)感覚になってしまったかもしれません。

でも、ほかの刺激が少なかった分、飢餓にくるしむ子供たちの映像や、
戦争で家をなくした人びとの映像に強い衝撃を受けました。

そんな厳しい両親でしたが、やさしい一面もありました。
母が小さい頃イギリスに住んでいたせいか、テレビを見せないかわりに 
海外の絵本などをよく読んでもらいました。

また、親に連れられてよく郊外の畑に行きました。親が趣味で借りた小さな
小さな畑です。土に触れている時の両親は とても優しくて、楽しそうでした。 
収穫の喜びや、畑のまわりの森で遊んだ思い出は、今の僕に大きな影響を
与えていると思います。

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【海の見える高校】

高校では 教室から海が見えました。

「潮風で学生が さびつく」と言われるほど のんびりした学校です。

水平線をながめて絵を描いているうちに だんだん絵柄が 
ゆるゆると曲線にゆがんできまいました。

「海の向こうに行ってみたいなぁ」とヨダレを垂らしてうたた寝したり
「きれいだなぁ」と水着のおねえさんにヨダレを垂らす3年間でした。

美大に行きたい、とも思いましたが、いかんせん絵がヘタで。

「海の向こう=英語でしょ?」 という単純な思い込みから 
英語だけは熱心に取り組み、どうにか大学へ…。


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【大学へ】

めでたく国際基督教大学(ICU)へ入って 「海のむこうへ近づいた!」と
思いきやまわりは 留学生や帰国子女だらけ。英語ぺらぺ〜ら。

「はじめの1年間 英語しか使うな!」という授業に
 
つたない僕の英語では とてもついていけず、そく落ちこぼれました。

「絵でも描くしかない…」と絵筆をとって自分を慰めていました。

そんなころ、 価値観をかえる出会いがありました。

下宿の大家さんが、絵を描く人だったんです。
美大をでた彼は、 美術専門学校の先生でした。

彼に「ものを見る」ことの大切さを教わりました。
「世界が美しく見える」が大家さんの口癖。

「ほら そこの落ち葉を見てみろ。ぱっと見、 ただの かれ葉だけど、
よくよく見ると赤やら黄やら緑やら 虹色に輝いて キレイだろう? 
美しいなぁ! オレこの葉っぱ 持ってかえるわ」

彼はいつも楽しそうに生きています。

道を歩いているだけで楽しいような人でした。たわいもない事でもたのしめる、
そんな生き方がすばらしいと思ったのです。彼の考え方にどっぷりひたって、
これから自由に羽ばたこうと夢膨らみました。

進路決定の時期をむかえたころ 絵の道をこころざす僕にたいして

僕: 「海のむこうへ行って絵描きになりたいです」
大家:「あほ! まずは デカイところにいけ そして世の中を見わたせ」

と就職をさとしてくれたのも彼でした。

その一言のおかげで どうにか就職する事ができました。


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【会社】


就職した大手通信企業では、国際的な部署に入りました。

「ついに 『海のむこう』が見えてきたーっ!」

世界中から情報があつまり、海外赴任してゆく先輩を見て、
ほんとうに世の中を見わたしている気がしました(気のせいでしたけど)。

僕自身もアメリカ、中国などあちこち出張させてもらいました。
仕事?もちろん上司のかばん持ちですが…。

「これが憧れの『海の向こう』かぁ!」  深呼吸して 見わたしてみると、

そこは日本と同じようなホテルとオフィス。ネクタイにスーツの人々。。。

「!?」

「ここ(大企業)から見わたせるのは 世界のほんの一部なんじゃ…?」

フツフツと疑問が湧いてきました。

「もっと広い世界が見たい! もっと自由に絵を描きたい!」

という思いがしだいに強くなました。
そして衝動的に、3年勤めた会社を飛びだしてしまいました。


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【旅へ】

会社を辞めたあとは、タイ、カンボジア、インドネシアなど経済的に貧しい国々
をスケッチしながら巡りました。いつかドキュメンタリーで見たような世界を、
この目で見て絵に描きたい と思ったんです。

そこには、ホントに これまでとは違った世界がありました。

腰を抜かすほど 偉大な 古代遺跡。

ジャングル、地平線までつづく畑。

どこの馬の骨ともわからない僕を歓迎して 家に泊めてくれるおばちゃん。

地雷で片足のない子供たち。

いっしょに遊んだこどもたちの かがやく瞳が忘れられません。
あの時に 「子供のために絵を描こう」と 絵本への道を志しました。

途上国をめぐって いちばん衝撃をうけたのは、貧富の差です。
彼らは、朝から晩まで必死に働いて年収数万円、という生活をしていました。
宿代が、1泊100円〜200円です。日本では子供のこづかいにもなりません。
たまたま日本に生まれた僕は、うまいモノを食べて いい暮らしして。。。

でも彼らは、経済的に貧しくても いきいきと生活を楽しんでいるようでした。
一方 豊かなはずの日本では、自殺率が実質 世界一だといいます。

「『ゆたかさ』ってなんだろう? 『しあわせ』って…? 『こころ』って…?」

いろんな疑問をかかえて 日本へ帰国しました。

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【絵本づくり】

帰国後、友人にマンションの管理人のクチを紹介してもらって細々と暮しながら
絵本づくりを学びたいと思って、 絵本作家/イラストレーターである
松本修一先生の門をたたきました。ここで絵本づくりの基礎を学ぶとともに、
志をおなじくする仲間たちとめぐり会うことができました。

できた絵本を松本先生の勧めでコンテストに出したところ 絵本賞をいただき、
本になりました。

絵本『こころどろぼう』です。

「こころ」をテーマに、旅で抱いた疑問をぶつけました。

心泥棒は世界中から「こころ」を盗んで ぱくぱく 食べます。
自分の「こころ」を大きく増やすために。でも けっきょく自分の「こころ」は
米つぶみたいに 小さくなってしまう。

あれは 僕自身の姿です。

世界から集まる食材を 安くスーパーで買えて…
世界中の映画をビデオで安く楽しめて…

でも なんだかなぁ。。。 

あの旅先で出会ったこどもたちの方が ずっとずっと楽しそうだったなぁ。

もちろん便利な生活になれてしまった僕が、この生活を捨てるのは、ムリ…。

でも

「あんな風に 心豊かに生きていくには どうしたらよいのだろう?」





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【イギリスへ】

そのヒントが イギリスにあると思いました。

「海の向こうへ」という熱は いまだにおさまらず 
今は、イギリスへの留学を企てています。

イギリスは100年まえ、世界の頂点をきわめて 富をあつめました。
でもこの100年、アメリカや日本に押されてゆっくりと衰退していく…。

そのなかで 緑ゆたかな公園をととのえて 美しい国土をつくりました。
古いものを大切にすることで 余計な出費を抑えて おだやかに暮しています。

世界のトップから「美しくひく」ということをやってきた国だと思います。

いまは日本は とても豊かだけれど これからは日本も
高齢化社会をむかえ勢いがなくなるのでは?と思います。

でも英国のスタイルをモデルに質素に心豊かに暮らしたらいいだろうと、
僕は思っています。

イギリスは絵本の生まれた国。
芸術教育も高い水準にあります。

小さいころから母にイギリスの話を聞いていたことも 
イギリス留学を決めたことに影響アリかもしれません。

イギリスの田舎で 「貧しくとも心ゆたかに、楽しく生きる」「美しく老いる」
というテーマの絵本を描くヒントを学べたら、と思っています。





海外の芸術大学の受験方法ですか?


石膏デッサンが重視される日本とは、かなり違います。

こんな話を聞きました。

日本人学生が とても上手な石膏デッサンを持って イギリスへ
受験しに行きました。

「これだけギリシャ彫刻を描いといて、ギリシャ彫刻に興味ないの? 
 何がしたいのか、わからん!」

と不合格にされたという話です。

「どういうプロセスで 何の意図で この作品をつくったのか」
ということがとても重視されるようです。


受験に必要なものは…

・ A1(A3の4倍)のシート 20枚
   ・・・・これに完成作品と そのためのスケッチや試作を 貼る

・ 英語の点数(TOEFL 500点 … 年々 甘くなっているようです)

・ 英語の作文 … 留学の理由

です。多くの大学の審査官が来日して 日本で面接審査をしています。

技術よりも 「発想のおもしろさ」や 「将来の可能性」を見るようです。
「絵がヘタで」と思っている人も、十分チャンスがあると思います。

最近は、(面接の通訳など)サポートしてくれる学校もありますし、
いろいろ奨学金もあるので、英語やお金が不安な方も 
興味があれば チャレンジしてみてはいかが? 

イタリアやドイツでは学費が無料の学校もあるようです!


英国留学が始まったら、絵本とは別にイギリスでの生活を
シンプルな絵でマンガにしてみます。日記エッセイ風にして
ネットに載せたいなと思っています。お楽しみにお待ちください。

今度こそ「海の向こうへ!」という熱が 満たされるよう期待しています。


夢は、田舎で自分が食べる分の野菜などつくって、つつましく暮すことです。

そこで子供の心が豊かになるような絵本が描ければ最高です。今まで通り、
放浪しながら「貧乏暇ナシ」ということになる可能性も大ですが…(涙)。



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こうせい
1973年東京都生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業後、
NTT国際本部へ勤務。
退社後、各国を巡る。現在フリーのイラストレーター。
著書に『こころどろぼう』(タリーズコーヒージャパン)がある。

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