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『アメリカ雑記帳』 

山川エアマートまどか

STUDIO ART CENTERS INT. (フィレンツェ)留学。WITTENBERG UNIVERSITY (オハイオ州)美術学部・陶芸科卒業。フジテレビジョン 広報を経て、報道カメラマンとして勤務。退職後、アメリカに転居。フリーカメラマンをしながらイラストレーターに。(現在、ワシントDC近郊のヴァージニア州スプリングフィールド在住)

ウェブサイト  www.madokadoodle.com

2004年2月23日『魚雷工場とバレンタインデー』



歴史的な古い石畳や町並みを残すヴァージニア州のアレキサンドリアという街は、ポトマック川のほとりに広がっています。骨董品点や様々なジャンルのレストラン、カフェや衣料品のお店が川に向かう道の両側に立ち並んでいます。観光シーズンでもそうでなくても、いつも人が多いこの街には、以前戦時中に活躍したトルピードファクトリーという建物があります。

TORPEDO FACTORY>>>トルピードとは、魚雷(魚形水雷)のことで、船や飛行機から発射されて水中を進み、目標物にぶつかると爆発する武器を差すのだそうです。もともとが魚雷工場であった大きな建物が、今は内装に手を加えてアートセンターと銘打った、こぎれいな観光スポットとなっています。この建物はポトマック川の水のしぶきがかかるような水辺の位置にあり、ワシントンDCから足を伸ばす観光客や、地元ヴァージニア、その他の近郊の州からの人で年中賑わっています。

ここはいわば、アーティスト自身が運営するギャラリーとでもいいましょうか、建物の中は小さい部屋に区切られて、数々のアーティスト自らが自分の作品を壁にかけ、魅力的な展示に工夫を凝らし、そして重要なのは制作のデモンストレーションをしながら作品を販売しているということです。工房ではありませんので、あくまでも商品を売る場所なのですが、観光客はろくろをまわす陶芸家や織物を時間をかけて仕上げて行くテキスタイルアーティスト、もくもくとやすりをかけるジュエリーデザイナーなどの仕事風景を楽しみながら、それぞれの小部屋を廻って行くことが出来ます。

このファクトリーにスペースを構えたいというアーティストはこの地域では大変多いのですが、毎年多数の入室希望者が申し込みをして審査を受けるというシステムになっています。必ずしも高名な作家がスペースを占めるとは限らず、訪れる人々の目を楽しませる素材であるということも大事な要素の一つです。もちろん彫刻家や陶芸家だけでなくて、画家や写真家もスポットはあるのですが。

ひとつ、気にかけておかなければいけないことは、基本的には店番兼デモンストレーターとしてアーティスト本人が各スペースに常にいなければならないということです。多くのスポットは、数人の同じ分野でのアーティスト仲間達で借り、それぞれのパートナーとローテーションを組んで切り回しているようです。わずかの賃貸料で、お客さんがどんどんやって来る人気スポットに自分の作品を置くことが出来るというこのシステム、日本でもどこかが本腰を入れて、観光地のビル一つ丸ごとギャラリー化する、なんていうことを採算を度外視して計画してくれると楽しいことだろうと思います。


さて、もう過ぎ去って行きましたが2月に気合いが入るイベントといえば、節分もさることながらバレンタインデーですね。女性がまるで慈善事業のようにチョコレートを購入して男性にプレゼントしなくてはいけないという日本のバレンタインデーの風習は、チョコレートラバーの私としてはなんとも悔しいといいますか、うらやましいものでした。私がチョコレートをもらいたいくらいなのだ、と思いながら本命のチョコ(価格に比例した、とびきり美味しいやつ)を相手用と自分用に二つ買い、義理チョコについつい手を出し不義理チョコとしてお腹に納めたことも少なくありません。

(C) madoka

アメリカでのバレンタインデーの役割とは、普段、機会を逃して言いそびれている『あなたの事を大事に思っているよ』という自分の気持ちを大切な人に伝え直す良いチャンス、ということだと思います。身近な人になんの理由やきっかけもなしに愛情を伝えるのは、今さらなんだか気恥ずかしいということは各国共通です。女性が男性に伝えるという性別の決まりはありません。年齢も関係ありませし、関係も自由です。ジュエリーや香水など、男性から女性へと向けたバレンタインギフトの広告が1月からあちこちで目に付き始めますし、お店のグリーティングカードコーナーには、あらゆる人間関係の組み合せのメッセージが思い付く限りカードに記されて賑やかです。孫からおじいちゃんおばあちゃんへのカード、友達へのカード、叔母から甥へのカード、義理のお姉さんへのカード、などが愛情の告白のカードに負けないくらいのスペースに揃うのです。

赤いハートのパッケージのチョコレートはバレンタインに付きもののシンボルとして売られますが、チョコレートをあげたからといってそれが思いを告白したことにはなりません。愛情を感じていること、大事に思っていること、好意を抱いていることなどは伝わるでしょうけれども・・・

娘の通う保育園では、月のはじめにクラス全員の名前や先生の名前を書いたお知らせが配られ、『(このバレンタインというお祭り騒ぎに乗りたい人は)クラスのメンバー全員分のカードやお菓子など、小さいバレンタインギフトをバレンタインパーティー(お楽しみ会です)でそれぞれに渡しますので用意して下さい』と準備期間が与えられました。金額的にはまったく大したものではありませんし、もちろん強制ではありません。当日娘は、手作りのカードや、チョコレート、あめなどがクラス全員の生徒数ぶん入っている袋を持ち帰って来ました。うちではハートの形のチョコレートにそれぞれ相手の名前と娘からのメッセージ(ということで私が代筆)を書いたものを持たせましたが、これは単に私がチョコレートが好きで余ったぶんは食べたいからというだけで選んだものです。チョコレートでもなんでも構いません。キャンディーにチョコレートや造花、マスコットや小分けの袋菓子など、いろいろのものをそれぞれの親が持たせました。誰にとっても金銭的な負担にならない小さな小さなギフトです。いずれ今日は何の日?バレンタインデーってどうしてあるの、と娘に聞かれたら『他の人にあなたは大事なお友達だよ、とかおばあちゃん大好き、ってあらためて伝える日なんだよ』と言おうと思っています。

ところで、好きでない人からもらったゴディバ(アメリカ英語では『ゴダイバ』と、ダにアクセントをつけて言います。ゴディバと言って以前全く分ってもらえませんでした)と、好きな人からもらう明治の板チョコレートってどちらがありがたいのでしょう。チョコレートに興味がない方々にとっては、ひと粒いくらのゴディバのトリュフも、板チョコレートも同じかもしれません。私はチョコレートのカテゴリーに入るものならアポロチョコからギラデリやゴディバまで何でもおいでおいでしたいのですけれど、チョコレートの種類に対してもっと冷静になれて、そしてチョコレートをもらえるもらえないが自分の人気のバロメーターとしてもろに響いたことのある、日本の男性の本音をじっくり聞いてみたいと思うのです。




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